1000年前から変わらぬ景色。今も、この先も
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「おふたりに式を挙げていただいた地を守っていく。 それが我々の仕事です」
1000年前から変わらぬ景色。今も、この先も

豊かな森に恵まれた日本。この国では昔から、木々を使った木造の建築が主流でした。風通しが良く湿度を調節できる木造の建物は、日本の気候にはぴったり。ただその一方で、形が失われやすい、という大きな欠点があります。

ヨーロッパなどでは、昔のままの風景が残る街も数多く見られます。しかし、それは頑丈な石造りの建物だからこそ叶うこと。台風や大雨、地震、火事などの災害に対抗するには、日本の木造の建物はあまりにも弱すぎます。人々の「残そう」という強い意志と努力がなければ、その姿はあっという間に失われてしまうでしょう。

日本各地に残る古い佇まいの街並みは、人々が意思を持って残してきた努力の表れです。

京都には、1000 年もの⻑い時間、変わらぬ姿で在り続けてきた神社があります。

京都市北区に位置する、上賀茂神社。

片岡山の木々を背後に抱き、緑と調和するように建つ上賀茂神社の社殿は、「平安時代から変わらない姿をしている」と言われています。境内には 2 棟の国宝と41 棟の重要文化財を有しており、1994 年(平成 6)にはユネスコの世界遺産に登録されました。

神々の気配さえ感じられるような、自然の中で行われる上賀茂神社の結婚式。この場所を受け継いできた神社の方々は、どのようなお気持ちで新郎新婦さまを迎え入れていらっしゃるのでしょうか。‍‍

神社という場所が持つ意味、そして、上賀茂神社の結婚式について、お話を伺いました。

1000 年前と変わらぬ姿を今に伝える

ー上賀茂神社の歴史について、教えてください。

上賀茂神社は京都で最も古い神社のひとつです。およそ 2600 年前、御神殿から 2 キロほど北にある神山(こうやま)という円錐形の山に、神様が御降臨になったのが始まりとされています。
現在の上賀茂神社の姿は、1000 年前、平安時代の人々が見ていた光景とまったく変わらない、と言われております。これは、人々に必要とされていたこの場所を、先人たちが残し、守ろうとしてきた努力の賜物です。

ー日本人にとって、神社とはどのような場所なのでしょうか。

日本には、はっきりとした四季があります。花見や月見、季節ごとのお祭りや、旬の食材をいただく習慣......日本人は昔から、四季の移ろいを生活に取り入れるのが上手なんです。

春、夏、秋、冬。日本の四季は、必ずこの順にめぐり、我々に生命を与える作物を実らせます。自然の恵みに感謝をする場所が「神社」であり、感謝の表現が「祭りごと」です。お宮参り、七五三、成人式......人は、人生の節目ごとに神社にお参りに行きますね。そこには、神様に「自然の恵みを得て、私たちは無事にここまで成⻑しました」という感謝の気持ちを伝える意味があります。

ー結婚式も同じなのでしょうか?

はい、結婚式も、祭りごとのひとつ。おふたりの季節の始まりを、神様にご報告する。それが、神社の結婚式が持っている意味です。

四季の移ろいを感じ、自然の恵みに感謝して暮らす。日本のこの心は、後世に伝えていくべき、最も大切なことではないかと考えています。

結婚式の日の「風」を感じ、覚えていてほしい

ー上賀茂神社で挙式をされるおふたりに、伝えたいことはありますか。

その日の「風」を全身で感じていただき、覚えていていただきたいです。

おふたりがお選びになった挙式の日は、寒いかもしれませんし、暑いかもしれません。もしかしたら、雨降りの日かもしれないでしょう。しかし、どんな天気であっても、その日に吹く風は、その日だけのもの。同じ風は、二度と吹きません。

ーその日、その場所で、おふたりにだけ吹く風ですね。

風は、神様からの自然の恵みです。その恵みを、全身に浴びて、挙式に臨んでください。何年か経って、写真を見返したときに、きっと思い出すでしょう。風で森が揺れる音、顔に感じる空気の流れ。記憶の中で再び、その日の風が吹くんです。

このような挙式は、空調の効いた室内では叶いません。豊かな鎮守の森に囲まれ、自然の中で行う挙式だからこそ、叶うことだと思います。

おふたりの記念となる、この場所を守る

ー上賀茂神社では、挙式後も参拝にいらっしゃる新郎新婦さまが多いと伺いました。

はい。結婚式を終えられた後も、ぜひ、節目ごとに足をお運びいただけたらと思っています。日々を無事に過ごせているお礼、「これからも無事に過ごせますように」という気持ちを、神様にお伝えにいらしてください。

そして、参拝いただきました折には、再び、その日の風を感じていただけたらと思います。「あの時よりもちょっと暑いな」とか「あの時よりもちょっと冷えているね」とかね。おふたりの挙式の日を思い起こし、初心に帰れる場所であれたら、と思っております。

また、結婚式では、境内の楼門(ろうもん)を背景にお写真をお撮りいただくのですが、結婚記念日にいらして、毎年同じ場所でお写真を撮られるおふたりもいらっしゃいます。

ー毎年の結婚記念日に同じ場所でお写真を撮る。素敵ですね。

楼門をはじめ、上賀茂神社の境内地は、1000 年前から景観を変えていません。そして、これからも、その姿を変えません。

おふたりが挙式をされた場所が、その時の姿のまま、いつまでも残っている。これは、とても大切なことだと思います。チャペルやホテルで式を挙げると、のちに会場の名前が変わってしまったり、時には会場そのものが取り壊されてしまったり、といったことが起きる場合がございます。それは、悲しいことです。

おふたりが式を挙げていただいた、この地を守っていく。それが、我々の仕事だと思っています。ですからぜひ、結婚式で撮っていただいた時と同じ場所で、お写真を撮りにいらしてください。

背景となる神社の風景は、これからもずっと変わりません。ただ、ご参拝いただくおふたりのシワは増えていくことでしょう。そのシワをそっと重ね合わせるように、おふたりで丁寧に歳を重ねていただけたら。そう思っています。

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上賀茂神社
〒603-8047 京都市北区上賀茂本山 339 番地
上賀茂神社婚礼部(075-748-1106)
http://www.lst.jp